保育士不足が深刻な今、注目されているのが潜在保育士の存在です。
保育士不足解消、待機児童問題解消のキーパーソンとなるのが、この潜在保育士であると言われています。
- 潜在保育士とは、どのような立場の人なのか?
- 潜在保育士が職場復帰するために、どのような支援が行われているのか?
今回は、元保育士の立場から潜在保育士の復帰支援について思うことを紹介します。
潜在保育士とは
潜在保育士とは、保育士資格を有しながら保育の仕事に就いていない人のこと。
以下の状況であれば、潜在保育士と呼ばれます。
- 保育士資格を取得して、1度も保育士として働いたことがない
- 保育士として働いていたけれど離職し、現在は保育士として働いていない
厚生労働省の調べによると、保育士登録者数約119万人のうち勤務者数は約43万人。潜在保育士は約76万人です。
保育士登録者数は約119万人、勤務者数は約43万人であり、潜在保育士(保育士資格を持ち登録されているが、社会福祉施設等で勤務していない者)は約76万人
この調査でわかるのは、保育士登録をしているけれど保育の仕事に就いていない人が、保育の仕事に就いている人を大きく上回っているということ。
保育士資格を持ちながら保育士登録をしていない人も含めると、さらに多くの潜在保育士がいると考えられます。
潜在保育士は、なぜ復帰しないのか?潜在保育士が増え続けている理由
なぜ離職したあと、復帰しない潜在保育士が増えているのか?理由を考えてみましょう。
家庭との両立が難しい
厚生労働省 保育士等に関する関係資料によると、潜在保育士の75%が配偶者有り、69%が子ども有りと言うことです。
このことから、潜在保育士が復帰する不安要素の第一位が「家庭との両立が難しいこと」となっています。
保育士としての勤務もこなしながら、家事、育児を行うことは想像以上に大変なもの。
- 同僚と同じように残業ができない
- 独身の同僚の理解が得られない
- 子どもが体調を崩すと、欠勤せざるをえない
実際に私も、子どもの進学という家庭の事情で保育園を退職しています。
保育士として働いている時に、出産前と同じように働けない状態に悩んだことも少なくありません。
家庭との両立は、結婚後の保育士にとって最重要課題なのです。
職場での人間関係への不安
潜在保育士が復帰するにあたって、職場環境応においての不安要素が「人間関係」です。
上下関係が厳しい保育園の世界。人間関係で悩むのは、新人保育士だけではありません。
- 先輩保育士が怖い
- 園長との関係で悩んでいる
- 保育士としてのキャリアを積み、中堅の立場になると園長と後輩保育士の間に挟まれる
保育園での人間関係は、潜在保育士の復帰をためらわせる要因ともなっているのです。
待遇面への不満
保育士は仕事内容の割に給与が低い職業であると言われており、制度への不満の声も多く見られます。
潜在保育士の特集やってるけど
子どもの命預かる重たい仕事なのに
残業代でない、残業ばっかり、休憩ない、休みも持ち帰りの仕事が山盛り
っいう悪条件ばっかりやのに薄給やからなー
これが解消されん限り絶対正社員では戻りたくないわ(°_°)— あき*もい* (@magimagi_24) 2014年3月21日
- 有給制度が整っていない
- 育休が取りづらい
- 残業代が出ない
- 持ち帰り仕事が多い
体調不良以外では有給を取得しずらく、育休制度はあっても利用している保育士はいませんでした。
そんな園の待遇面の不満から離職し、保育士の仕事自体を辞めてしまう人も多かったです。
健康・体力面への不安
保育士の仕事は体力勝負。
潜在保育士が復帰するにあたっての個人の状況での不安要素第二位は、「自身の健康・体力」という結果に。
特に子育てがひと段落してから復帰を考える50代以降で、健康・体力面で不安を感じる人が多く見られます。
家庭の状況が落ち着いて復帰をしたいけれど、身体がついて行かないと感じる人も多いのです。
潜在保育士の復帰支援
潜在保育士の不安要素をなくし、復帰を促すために、自治体や転職サイトではさまざまな復帰支援が行われています。保育士の復帰支援について紹介しましょう。
厚生労働省による「保育士確保プラン」
厚生労働省「保育士確保プラン」の公表 によると、厚生労働省では保育士確保のための取り組みとして「4本の柱」を実施しています。
- 人材育成
- 就業継続支援
- 再就職支援
- 働く職場の環境改善
この中でも国は、潜在保育士の復帰支援として特に再就職支援に力を入れています。
再就職支援の内容は主に以下のもの。
- 保育士、保育所支援センターの積極的な活用
- 保育士マッチング強化プロジェクト
それぞれ具体的にはどういったものなのか、詳しく説明します。
保育士・保育所支援センターの活用
厚生労働省が掲げる保育士確保プランの再就職支援の1つが、保育士・保育所支援センターの活用です。
保育士を求めている保育園と就職活動中の保育士をつなぐために各都道府県や地方自治体が設置する支援システムで、潜在保育士への就職斡旋や相談支援の他に、実技研修などが実施されることもあります。
無料で利用できますが、自治体によっては事前登録や予約が必要な場合があります。
支援内容や方法は自治体によって違いますが、待機児童問題解消のための保育士確保に向けて、潜在保育士が安心して働ける支援が進められています。
保育士・保育所支援センターでは、再就職に向けた求人案内や研修情報を積極的に提供し、潜在保育士が「また保育士として復帰したい」と思える試みが進められています。
保育士マッチング強化プロジェクト
ハローワークと都道府県などが連携し、保育園と保育士をつなぐ取り組みが保育士マッチング強化プロジェクトです。
「保育士職場体験講習会」なども予定され、潜在保育士が就職先である保育園をより身近に感じられる工夫もされています。
この保育士確保プランは、平成29年度末までに不足している6.8万人の保育士を確保するために発足されたプロジェクトですが、30年度以降も引き続き取り組みが行われています。
転職サイトによる、保育士向けのセミナー
求職中の保育士が利用している転職サイトでは、潜在保育士が復帰するためのセミナーが開催されています。
セミナーの内容例は、以下のものが挙げられます。
- 履歴書の書き方
- 働きやすい保育園の選び方
- 保育園の園長や保育士と直接話ができる合同説明会
求職者向けのセミナーと転職フェアを同時開催する場合もあり、会場を貸し切って求職中の保育士を集い、さまざまなプログラムを用意して、保育士の転職活動をサポートします。
参加は無料なので、積極的に参加してみましょう。
セミナーで就職活動についての情報を収集し、転職フェアで多くの保育園の担当者と直接話をすることは、潜在保育士が復帰する良い機会です。
転職フェアについては、保育士の転職フェアを活用する方法も参考にしてくださいね。
今後保育士は働きやすくなるのか?
潜在保育士の増加から分かるように、保育士は「働きづらさ」を感じています。
国も潜在保育士に向けてさまざまな復帰プランを提案していますが、根本的な解決は保育の現場を変えなければ実現しません。
私も初めに働いていた保育園では、子育てをしながら働くことなど考えられませんでした。
我が子の体調不良でも休みづらい職場環境だったからです。
国が定めている保育士の規定人数では、1人保育士が休んでしまったら保育は立ち行かなくなるのが現状。
保育士を離職し潜在保育士となった人は、そんな現場の状況を目の当たりにしているのです。
ただ、そんな状況の保育園ばかりではありません。
保育士自身が良い環境の職場を探せば、働きやすい保育園を見つけられるでしょう。
国の規定人数以上の保育士を配置し、安心して働ける保育園もありますが、今後求められることは全ての保育園が保育士が働きやすく、長く務められる環境を作ること。
そのためには保育士の現場の声を反映させながら、国を挙げて取り組む必要があると思います。
実際の保育現場の声を聞きながら現状を変えなければ、潜在保育士の減少、保育士不足の解消には繋がらないでしょう。
まとめ
潜在保育士増加の背景には、保育士として働くことへの不安があります。
不安を取り除き、潜在保育士がもう1度保育士に復帰したい思える環境を作るために、国と都道府県、自治体や転職サイトも潜在保育士に対する支援を進めています。
もう1度保育士として働く勇気が持てるように、さまざまな支援を上手に活用したいですね。
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